コピーライターの世界には、必ずと言って良いほど「コンセプト」というワードが出てきます。
あなたがライティングをする際にも何かしらの「コンセプト」が絡んできており、それを理解しているのとしていないのとでは、大きくライティングクオリティに差が出ます。
ここでは「コンセプト」とは一体なんなのか?その意味とは?目的についてなどをご紹介していきます。
「コンセプト」とは何か?
この「コンセプト」という言葉自体は知っているけれど、実際にどういう意味なのか、ライティング、マーケティングの世界でどのように使われているのかまで、知らない方も多くいらっしゃると思います。
そこでまずは「コンセプト」とはそもそも何なのかを、ご説明していきます。
「コンセプト」の意味とは?
「コンセプト」を和訳にすると「概念」という意味です。
『概念って言われてもよく分からないんだけど』と思うでしょうし、その通りよく分かりませんよね。
ライティングやマーケティングの世界では、
「コンセプト」=「軸となる考え方」
と言うと分かりやすいかもしれません。
例えば有名なコンセプトにこういったものがあります。
1000曲をポケットに
こちらは非常に秀逸なコンセプトであり、キャッチコピーでもあると思います。
今は1000曲くらいの曲数を1つのポータブルプレーヤーに入れるのは当たり前かもしれませんが、iPodが登場した当時は、圧倒的な衝撃を与えました。それまでCDを持ち歩いたり、MDに数曲だけ入れるというのが日常だったところ、スティーブ・ジョブズはその常識を打ち砕いたわけです。
iPodを単純に「1000曲の音楽が入るプレーヤーです」と言っても、ここまで歴史的なヒットはしなかったでしょう。ではなぜ、iPodが世界的に有名になったのか。それはやはり「コンセプト」が完成されていたからなんです。
「1000曲をポケットに」この一言を見るだけで、頭の中でこうイメージすることができませんか?
『1000曲もの音楽を、ポケットに入るほどの大きさで持ち歩ける』
「コンセプト」とは、そのように誰もが鮮明に思い浮かべることができる「商品価値の言語化」と言ってもいいでしょう。
- 誰のためのものなのか?
- 何をするものなのか?
- どんな価値があるものなのか?
それを一言で表せられるのが「コンセプト」です。
「コンセプト」の目的とは?
では、なぜこのような「コンセプト」を作る必要があるのか?どんな目的があって作っているのか?そちらについてお伝えしていきましょう。
実はこれ、1つ上のお話で答えは出ているんですね。
「商品価値の言語化」
これが目的でもあるんです。
と言っても、これだけだとよく分からないですよね。実は商品価値の言語化をする上で大きく2つの狙いがあるんです。
- お客さんに商品の価値を伝えるため
- 販売者側が商品の価値を統一するため
主にこのようなところでしょうか。
1つ目の「お客さんに商品の価値を伝えるため」というのは、すでに何となくお分かりいただけたと思います。先程のiPodを例にすると「1000曲をポケットに」=「たくさんの音楽を、ポケットに入る小さな機械で持ち運べる」というお客さん目線で価値が感じやすい形になっていますね。
2つ目の「販売者側が商品の価値を統一するため」というのも、我々ライターとして重要なものです。
例えば1つの商品を紹介するためライティングをするとします。ただ、その商品を一言で言い表せられないとしたら、お客さんに伝えたいことが定まらずに商品の価値がしっかりと伝わりません。かつ、その販売企画に関わっている人々は「どこが売りの商品なのか」を統一できないことにより、商品の魅力を正しく伝えることができずに、結局「売れなかった商品」になってしまいます。
「コンセプト」は我々ライターを含めた販売企画に関わる人間の価値統一、それが定まることによって初めてお客さんへ商品の価値を最大限伝えることができます。
ライティングと「コンセプト」の関係性
「コンセプト」の意味や目的など、何となくイメージできたと思います。ご覧になっていただいたように、「コンセプト」は「ライティング」とも深く関わりがあります。
ライターとして活動するのであれば、コンセプトは絶対に欠かせないものです。ここではその2つの関係性について、ご紹介していきます。
「コンセプト」がないと良い文章は書けない
商品を紹介、または販売する上で「コンセプト」が整っていないと、良い文章は書けません。
我々ライターの仕事は「文章を書く」ことではありません。自らが書いた文章によって「興味を持ってもらうこと、買ってもらうこと」が目的です。
その上で「コンセプト」は非常に重要であり、ここが固まっていないとどんなに文章力がある人でもうまくいきません。
「コンセプト」を理解していないままでは、商品の価値を理解していないこととなり、お客さんへ商品の価値を伝えることも不可能になります。
特に文章で伝えるライターとしては、コンセプトは絶対に欠かせないものです。
「コンセプト」を起点として「ライティング」で表現する
先程のiPodの例「1000曲をポケットに」というコンセプトは、一言で誰もがイメージできるものだとお伝えしました。
しかし、一言でイメージはできるものの、それだけでより多くの人に興味・購入を促すことは実際には難しいことです。
例えば「自分はCDを持ち歩いているからいいや」とか「MDがまだ使えるからいらない」と思う人もいるはずです。それはつまり、どのような商品かをイメージさせることは出来たけど、あくまでもまだ「ほしい!」「買いたい!」という気持ちまで高まっていないということ。ただ彼らも音楽を聞きながら街を歩くことを好んでいるため、iPodを購入する可能性も十分にあるんです。
そこで彼らに、iPodの魅力をさらに伝えていくためにも、「コンセプト」を起点として、「ライティング」で表現していく必要があります。
例えば、「もうCDを入れ替える必要はありません!」「CDを入れ替えるのめんどくさくないですか?」といったユーザーの悩みを明確化させます。そこで「このiPodなら何十枚ものCDの曲を、ポケットに入るサイズに入れられます」といった悩みを解決できた未来を想像させる。そういった悩みの明確化や解決策をライティングで伝えられるのは、「1000曲をポケットに」というコンセプトが軸にあってこそです。
商品の価値を伝えるため、そしてより多くの購入者を得るためにも、「コンセプト」を起点にして「ライティング」で表現する必要があります。
「コンセプト」は一言で商品価値を伝えつつ、さらにその一言を広げていく「軸」の役割です。
「コンセプト」を作れるライターは最強
コンセプトを作るのはマーケターというイメージですが、実はライターが作るケースもあります。
私が勤務していた企業ではセールスライターがコンセプトも考えることが多く、その方が成功確率も飛躍的に上がるという経験もしています。
もちろんたった1人で考えるということではなく、様々な人の力も借りて作り上げるんですが、根本を考えていくのはライターでした。
このケースでは何が良いかというと、「自分で考えたコンセプトなので、どのようにライティングで表現するかを最初からイメージできている」ということなんです。
人が作ったコンセプトは、まずどのような考えでそのコンセプトにしたのかを理解する必要があります。その時間を要することになるのはもちろんですが、やはり自分で考えついたコンセプトではないため、100%理解するというのは正直難しいです。
100%理解できないとなると、ライティングで伝えられる価値も減ってしまうことになります。
しかし、自らが考えついたコンセプトならば、商品の魅力を最大限文章で伝えることができますし、その分、購入者も爆発的に増える結果が考えられます。
そのため、「売れるコンセプトを作れるライターは最強」それが私の自論です。
少し考えてみてください。
- どんなコンセプトの商品でもライティングできます
- 自分でコンセプトを考えてライティングできます
この2つだと後者の方がクライアントにとっても、魅力的に感じます。なんといってもライティングのみではなくコンセプトも考えられるライターなんですからね。企業に属していても「書くだけではなくて、売れるライター」として重宝されることでしょう。
この2つだと後者の方がクライアントにとっても、魅力的に感じます。なんといってもライティングのみではなくコンセプトも考えられるライターなんですからね。企業に属していても「書くだけではなくて、売れるライター」として重宝されることでしょう。
「売る力」「書く力」これが備わっているだけで、他のライターとは一線を画すことができるはずですし、ぜひ目指していただきたいライターの姿です。
コンセプトの作り方は、またこちらの記事で解説しているのでぜひご覧になってください。
商品に興味を持ってもらうため、売るために必要となるのが「コンセプト」です。 コンセプトが固まっていないと、お客さんに価値を感じてもらいにくく、購入に結びつかない可能性が高くなってしまいます。 つまり「ほしい」「買いたい」と思っ[…]
要注意!間違った「コンセプト」の解釈
ここで「コンセプト」を作る上での注意をお伝えします。
間違ったコンセプトの作り方、解釈をしてしまうと売れるものも売れません。コンセプトについてインターネットで調べてみると色々な情報がありますが、重要なポイントが書かれていないものがほとんどです。
間違ったコンセプトを作ってしまわないように、ぜひ最後までご覧になってくださいね。
ダメなコンセプト1:「商品」だけにフォーカスしてしまう
非常に多くの方がやってしまいがちなのが、「商品」だけにフォーカスしてしまうということです。もう少し言うと、商品の特徴やスペックだけをアピールしてしまうというもの。
先程のiPodを例にしてみましょう。
「1000曲を入れられる」のは商品の特徴として最も打ち出すべきところです。ただ、もしここに「容量は5GBです!」「重さは185g!」「サイズは102×61.8×19.9(mm)」と他スペックの情報もコンセプトに入れたとしたらどうでしょうか。
確かにたくさんの曲が入って、CDよりも小さくて軽いので、商品の魅力としては伝わると思います。しかしその情報だけで多くの方が買いたいと思うでしょうか?
答えは「No」です。
なぜなら「iPodを使ったイメージができないから」です。人は自分が使っているイメージができないものに対して、お金を払いたがりません。
家だって車だって、自分が住んでいる様子、乗っている様子をイメージしてこそ買いたくなるものです。
つまりは商品の特徴を伝えてしまっているだけのコンセプトは、「ユーザーに購入後をイメージさせることができない=購入意欲を持ってもらえない」ということになってしまいます。
「とりあえず商品の特徴を伝えておけばいい!」というのは大間違いなので、十分ご注意ください。
ダメなコンセプト2:自己満足のコンセプトにしてしまう
もう1つは「自己満足のコンセプト」にしてしまうというものです。これも結構やってしまいがちな人が多いんですね。
そもそもコンセプトの目的は「お客さんに商品の価値を伝えるため」とお伝えしました。ただ、コンセプトを考えれば考えていくうちにハマってしまうのが「こういうのがウケるんじゃないか!?」と自分よがりな案を出してしまうということです。
コンセプトにおいて商品と同様に重要なのが、お客さんと市場です。
そのはずなのに、お客さんにとってどう有益かも考えず、さらに市場も無視して、とりあえずインパクトを出してみようと、奇をてらったコンセプトにしてしまう。
iPodを例にしてみると「日本経済が崩壊しても、音楽だけは生き残る」みたいなことを言われたとします。確かにインパクトはあるかもしれないし、何か壮大な感じはするかもしれません。でも、日本経済の崩壊と音楽って何の関連性があるの?よく分からない?と思われるだけで、結局「買ってみたい」という気持ちに到達させるのは至難の業でしょう。
「売りたい商品を売る」のではなく、「人々に必要とされるものを売る」という考え方でコンセプトを考えることが大切です。
「売りたい商品を売る」のではなく、「人々に必要とされるものを売る」という考え方でコンセプトを考えることが大切です。
「コンセプト」と「テーマ」の違いとは?
よくコンセプトと似たようなイメージで使われるのが「テーマ」です。
- 「コンセプト」・・・概念。商品企画などの基本的かつ統一的な考え方や視点
- 「テーマ」・・・主題。芸術作品などの中心となる思想内容
といった違いがあります。
これだけだとまだちょっとよく分かりませんよね。
「コンセプト」はここまでお伝えしてきたように、「軸となる考え方」「商品価値の言語化」とお伝えしてきました。これはかなり漠然と言うと、商品をお客さんに購入させたいために作り上げるものです。
一方「テーマ」は映画や絵画などにおいて「作者が作品を通して伝えたいこと」を表しています。例えば有名映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。車のデロリアンをタイムマシンに改造して、それによって過去や未来へ行き来する物語です。でもこの映画にはただ楽しく見るというだけではなく、作者のメッセージもあるんです。
「人間の未来は白紙だって言う事だ。未来は自分で作るのだ。」
そういったセリフが劇中に登場します。つまりこれは、見ている人へ向けて「未来は白紙だから自分で作っていこう」というテーマを伝えているということになります。
この2つはそれぞれの役目があり、使い分けも必要です。ご注意いただきたいのが「コンセプト」=「テーマ」だと思ってしまわないこと。それはつまり先程あげた、自分が伝えたいことだけを言うような「自己満足のコンセプト」になってしまうからです。
でも、「コンセプト」と「テーマ」を組み合わせることは可能であり、より商品価値や販売者側の意図が伝わるものとなることもあります。
iPodの「1000曲をポケットに」というコンセプトに、「音楽をもっと自由に楽しんでほしい」というテーマが加われば、ジョブズさんの想いも伝わることで、よりiPodに惹き込まれる方もいると思います。(実際にジョブズさんがそう思っていたかは存じ上げませんが・・・)
このようにコンセプトとテーマは異なるものですが、組み合わせるとかなり強力な訴求もできるようになるでしょう。
まとめ
「コンセプト」とは言葉は聞いたことがあっても、実際に理解している方は多くはありません。しかし、ライティングを行う上で非常に重要なものです。コンセプトがどういったものかを理解しているのといないのとでは、ライティングのクオリティに大きな差が生まれるでしょう。
今後、ライティングをする上で、商品の「コンセプト」=「軸となる考え方」を理解した上で執筆に臨んでみてください。あなたが今からライティングする商品内容の、コンセプトを理解するところから始めてみてはいかがでしょうか。